「沼地の恐怖」( トルーマン・カポーティ)
「沼地の恐怖」(原題:Swamp Terror)は早熟の天才と呼ばれるカポーティの初期短編で、おそらく10代の頃に書かれたものかと思われる。 「沼地の恐怖」だけでなく「トルーマン・カポーティ初期短編集」に収録されている作品群は「習作」と呼ばれることが多いが、少し違和感を覚える。「習作」とは練習目的で書かれた作品のことだが、カポーティ本人は練習とは思っていなかったのではないだろうか。結果的に練習になったということならわかるが、練習を目的に小説を書くというのはどうもピンとこない。 「沼地の恐怖」は、タイトルから受ける印象通り、不気味さに包まれたダークな短編だ。森を舞台にした冒険小説風の設定とも言えなくはないが、南部ゴシックのムードが濃く、ウェットで陰鬱。自然の健やかさや爽やかさはまるでなく、逆に息苦しさを覚える。 あらすじは…
ジェプとレミーという二人の少年が犬を連れ、逃げた囚人を見つけるために森へ入る。しかし、レミーは怖気づきすぐに引き返してしまう。ジェプは犬と共に奥へと進むが、得体の知れぬ不気味さに不安が高まる。ガラガラ蛇に遭遇し、犬が斜面を転げ落ちて死んでしまう。そして迷子になり、引き返す道さえわからない。次第に夜が近づき、あたりが暗くなりはじめる。